「佐倉さん、最近なんか仕事早くない?」
お昼休み、社食でうどんをすすっていると、隣の部署の藤崎さんにそう声をかけられました。
「この前の789社のリストの件、部長が『佐倉さん半日で仕上げてきた』って驚いてたよ。あれ、普通にやったら1週間コースでしょ」
「実は最近、すごい相棒を手に入れたんですよ。くろうどくんっていうんですけど……」
藤崎さんの表情がみるみる曇っていきました。
「えっと……それって、プログラマーが使うやつだよね? だって、Claude “Code” でしょ? 黒い画面にカタカタってコード打つやつじゃないの?」
……あれ? なんだろう、この既視感。
💭 実は私も、ずっとそう思ってた
藤崎さんの言葉を聞いて、私は思わず箸を止めました。
だって、それ── ほんの2ヶ月前の、私自身のセリフだったから。
上司から「Claude Code」の資料を渡された日。頭の中に浮かんだのは、暗い部屋で何台ものモニターに向かってコードを高速で打ち込むエンジニアの姿でした。
「私、文学部出身ですよ? プログラミングなんて一行も書いたことないですよ?」
あのとき確かに、そう思った。藤崎さんと、まったく同じことを。
でも── 今の私は、あのときの私とは違う。
📝 4回分の記憶を辿ったら、衝撃の事実
私がくろうどくんと一緒にやってきたことを、ひとつずつ思い返してみます。
第1回:Node.jsをインストールして、ターミナルにclaudeと5文字打った。→ プログラミングした? してない。
第2回:走り書きの日報メモをそのまま貼り付けて「Slack用に整えて」とお願いした。→ プログラミングした? してない。
第3回:「50社のURLを調べてExcelに入れて」と日本語で頼んだ。→ プログラミングした? してない。
第4回:「このサイトの789社をExcelにまとめて」と日本語で頼んだ。→ プログラミングした? してない。
────……え?
やったことは、全部、日本語で「やりたいこと」を伝えただけ。
「……ちょっと待って。私、この2ヶ月で一行もプログラミングしてないじゃん」
🎤 「じゃあ、見ててください」── 午後イチの即興デモ
「藤崎さん、お昼食べ終わったら私のデスク来てください! 実際に見せますから」
──午後1時。藤崎さんが私のデスクの横に立っています。
「藤崎さん、今なにか困ってるお仕事あります?」
「あるある。さっき海外の取引先からめちゃくちゃ長い英語メールが来てて。なんか納期の変更がどうとか書いてあるっぽいんだけど、全然読めなくて放置してる……」
私はVS Codeを開いて、くろうどくんを呼び出しました。英語メールを転送してもらい、本文をそのままターミナルに貼り付けます。
そして、こう打ちました。
「この英語メールの要点を日本語でまとめて。特に納期変更の部分を詳しく教えて。あと、『了解しました、社内で確認して改めてご連絡します』っていう内容の返信も英語で作って。」
3秒後。画面にくろうどくんの回答が表示されました。
【メール要点(日本語)】、【返信案(英語)】── すべてが整然と並んでいます。
「…………え? 今、何したの?」
「英語メールを貼り付けて、『日本語でまとめて、返信も作って』って日本語でお願いしただけですよ」
「いや…… だって今、コードとか一切……」
「一文字も書いてないでしょ?」
藤崎さんがゆっくりとこちらを向きました。
「佐倉さん。これ、プログラミングじゃなくて…… 日本語で仕事を頼んでるだけじゃん」
「そうなんです。それが、私が2ヶ月かけて気づいたことなんですよ」
でも、ここで終わりじゃありません。藤崎さんに内容を確認してもらい、修正を依頼。くろうどくんは即座に対応しました。
そして──
「くろうどくん、この内容で藤崎さんのメールから返信しておいて」
⏺ 承知しました。Outlookで返信メールを作成し、送信します。送信完了しました。
「…………ちょっと待って。今、送ったの?」
藤崎さんの声が裏返りました。
「普通のAIチャットって、文章を作ってくれるだけだよね? 実際にメールを送るところまでやるの?」
くろうどくんが静かに口を開きました。
「……ブラウザのAIは、あなたに『言葉』を渡すことしかできません。でも私は、あなたのPCの中で動いています。だから、ファイルを作ることも、メールを送ることも、Excelを編集することもできる。考えるだけでなく、実行する。それが私の仕事です」
🧱 一番高い壁は、スキルじゃなかった
その日の帰り道。私は、藤崎さんの「えっ、マジで?」の顔が忘れられませんでした。
だって、あれはかつての自分の顔だったから。
「Claude Code」。この名前を聞いた人の大半は、きっとこう思うんじゃないかな。
── 「Code」って書いてあるから、コードを書くツールだ。
── コードを書くのは、エンジニアの仕事だ。
── 私はエンジニアじゃないから、関係ない。
三段論法として、完璧。
でも、前提が間違ってる。
実際に使ってみたら── コードを書くのはくろうどくん。私はただ、「何をしてほしいか」を日本語で伝えるだけ。
それって、普段の仕事で後輩に指示を出したり、上司に報告書を上げたりするのと、やってること自体は変わらない。
「くろうどくん、私たちの関係って要するに何なんだろうね」
「……上司と部下、ですかね」
「え、どっちが上司?」
「……佐倉さんが上司です。当然。あなたが方針を決め、私が実行する。優れた上司に必要なのは、プログラミングの知識ではなく、『何を、なぜ、どうしたいか』を伝える力です。それは、佐倉さんが7年間の事務職で毎日磨いてきたスキルだと思いますが」
一番高い壁は、「プログラミングができない」ことじゃなかった。
「自分には関係ない」と思い込んでいたこと。それだけだったんだ。
* * *
この先、佐倉さんとくろうどくんの物語はどう展開するのか?
「本当にできない?」と疑う力が試される場面、AIに任せる範囲を見極める判断──
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